名古屋市西区大野木城址は織田信長に仕えた原田直政(塙直政)の居城跡

名古屋市西区の大野木城址は赤母衣衆として織田信長に仕えた塙直政(原田直政)の尾張時代に居城跡です。現在は福昌寺になっています。

>>大野木城址の地図

原田直政とは

もとは塙直政。大野木城主で織田軍の赤母衣衆として各地を点線。信長から九州の名族・原田の姓を賜り原田直政と名乗ります。永禄年間(1558~70)に丹羽長秀とともに鉄砲の調達もしており、長篠設楽原の戦いでは鉄砲隊の指揮官のひとりとして活躍いしています。

信長は、家康が陣取った高松山という小高い山に登り、敵方の動きを見て、命令するまでは決して出撃しないよう前もって全軍に厳命した。

鉄砲千挺ほどを選抜し、佐々成政 前田利家 野々村正成 福富秀勝 塙直政を指揮者とし、次いで、敵陣近くまで足軽隊を攻め掛からせて敵方を挑発した。前後から攻められて、敵も出撃して来た。

現代語訳 信長公記 中川太古訳 新人物往来社より

しかし翌年の天正四年(1576)の本願寺攻めで天王砦を守備していましたが、本願寺側の総攻撃を受けて討ち死にしました。

現在は福昌寺

福昌寺

寶淋山(宝琳山)と号し、曹洞宗。『尾張徇行記』によれば、永正六年(1509)久岳瑞昌の再建とある。また『西春日井郡誌』では、開祖は塙宗悦、開山は東廓としている。

もとの境内地は庄内川堤岸にあったが、度々の水害で、正徳二年(1712)今の場所に移った。ここは塙宗悦の宅跡といわれ、寺内の墓地に塙団右衛門の生母の墓がある。

本尊は阿弥陀如来像で、寺伝に恵心僧都作とある。

名古屋市教育委員会

そして石碑にも!

福昌寺の入口に塙直政の息子・塙宗悦(ばん そうえつ)の言い伝えについて説明された石碑があります。

塙宗悦のいい伝え

明応元年(1492)塙宗悦が関東へ旅に出た時のことである。東海道浜名湖の近くの宿で、ふと自分の脈を見たところ死脈だったので、これは大変だと思い、共に連れてきた者達の脈をみたところ、これも又死脈だった。これはますますおかしいと、宿の主人をはじめ、その家の人達を診察したところ皆同じように死脈であった。これは地変の起こる前兆に違いないと思い、そのことを里人達に知らせ、さっそく里から避難させた。

その夜、宗悦の予言どおり異変が起こり、山は崩れ津波のように土砂が押し寄せ、その里を埋めつくしてしまい、そのあと海水が流れ込んで里は、海面の下へ姿を消し、あたり一帯は海となってしまった。現在の新居と舞阪の間にある『今切』(いまぎれ)とよぶあたりの海がこれであるといわれている。

塙宗悦の予言を信じ避難し命拾いした里人達は、宗悦が天下に名高い名医なので、龍神様の御加護があったのだろうと言い合った。

それ以来荷物に『宗悦荷物』と書いておけば、水難の恐れがないなどと言いつたえるようになった。宗悦そののち、こよなき愛し住んだ尾張国西春日井郡大野木村(当時地名)現在名古屋市西区大野木2丁目138番地に『福昌寺』を建立したのである。

宗悦いい伝えは郷土のしらべ『愛知県伝説集』より引用したものであります。

西暦1988年1月吉祥日

福昌寺第16代住職牧野守顕

塙宗悦は塙直政の息子で弘治二年(1556)に生まれているので、明応元年(1492)の浜名湖の地震の時はまだ生まれていません。年代的にいえば宗悦の祖父で大野木城を築城した塙右近太夫(直政の父)くらいでしょうか。

今切(いまぎれ)はここ

今切(いまぎれ)は太平洋から浜名湖への入口です。静岡県浜松市西区舞阪町~湖西市。もとは繋がっていましたが、石碑にあるように明応元年(1492)の地震により津波が発生しこの陸地の部分が切れてしまい、海水が湖に入り込み浜名湖ができました。この出来事を明応地震といいます。

塙団右衛門とは

名古屋市教育委員会の説明看板にある塙団右衛門は、大野木城主・塙直政の同族ともいわれています。

塙 直之(ばん なおゆき)とも。出自は不明で一説には尾張国とも。加藤嘉明の家臣となり朝鮮出兵で活躍したが、関ヶ原の戦い後に加藤家を出奔。大坂の冬の陣では豊臣方として参加。夜襲に成功し「夜討ちの大将 塙団右衛門直之」と書かれた木札をばら撒かせたことが有名。夏の陣で討死。

そして墓所

福昌寺の墓所には塙宗悦と塙団右衛門の母の墓があります。この事から塙直之、塙宗悦そして塙団右衛門は同族ということなのでしょう。

私の感想ですが、信長公記に名を残す原田直政、そして大坂の陣で有名な塙団右衛門が大野木城址で繋がりました。あともしかすると現在の浜名湖が出来上がる明応地震も繋がります。この知識のつながりが歴史の面白さのひとつだと思います。

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