浅野文庫蔵諸国古城之図(あさのぶんこぞう しょこくこじょうのず)とは、江戸時代に広島の浅野藩が収集した全国の古地図をまとめた本です。
特徴としては江戸時代にはすでに廃城になっている城が多く、またなぜか愛知県の城が多い。
詳細を言うと、浅野文庫蔵諸国古城之図には177の古城図がありますが、そのうち三河は56城、尾張1城が記載されています。
つまり三河の城が全体の三分の一近く載っています。この理由はよくわかりませんが、この本の解説部分で『松平氏、徳川氏との関連性があるのでは?』というニュアンスの指摘があります。
でも逆に言うと、愛知県の城を巡る人には必須の古城図ともいえますね。
現に私も愛知県、名古屋市の城巡りの会である、愛知ウォーキング城巡りクラブの見学会で巡る城は、この浅野文庫蔵諸国古城之図を参考に解説している事も多いです。
例えば『浅野文庫蔵諸国古城之図にこういった記載があるのでココはこうだったと思う』みたいな、根拠にもなりますね。
愛知の城一覧
では浅野文庫蔵諸国古城之図には、愛知県のどんな城が記載されているのか?ここに一覧を書いておきます。
【尾張】1
(大高城)
桶狭間合戦時に織田軍の兵糧攻めに遭い、今川軍だったを松平元康(後の徳川家康)が兵糧を入れて救出した城。本多忠勝の初陣の城とも。
【三河】56
松平
松平城のこと。徳川氏の旧姓・松平氏の最初の拠点にあった城
日近
作手の奥平氏の支城だった日近城。連郭式の縄張りで以降もよく残る中世の山城
岡村
現在の岡崎市岡町にあった乙川渡河点を押える池野氏の城
羽栗
現在の岡崎市に残る三河山中城のこと。家康の祖父・松平清康が家臣の大久保氏に命じて攻略させた城で現在でも当時の遺構が色濃く残るほか初期の馬出しも残る
生田
岡崎市美合町に残る酒井彦四郎の城。現在では田んぼの中に石碑のみ。
田代
豊田市下山地区(旧下山村)にあった城、松平一族は入城した後、武田勝頼によって落とされた。
岩津
岡崎市の岩津城のこと。松平氏三代・信光が落とした城で今川軍の伊勢新九郎(北条早雲)に攻められた。
浄古斎
新城市の大野田城または中市場城のこと。菅沼定盈が城主だった野田城の支城。
長篠
天正三年(1575)の長篠・設楽原の戦いで奥平氏が武田軍から守った長篠城。新城市。
武節
豊田市武節町。田峰城主・菅沼定信の支城だった武節城。長篠・設楽原の戦いで敗北した武田勝頼を招こうとしたが家臣の裏切りに遭い、武節城に招き入れた。
作手ハロウ
新城市作手にある亀山城。奥平氏の居城。
野田
新城市に残る菅沼定盈の居城・野田城。武田信玄が生涯最後に攻めた城で鉄砲に狙撃されたという伝承も残っている。
医王寺
新城市。長篠・設楽原の戦いで武田勝頼の本陣が置かれた場所。
作手市場
新城市作手の古城が4つ記された古地図。上から文珠山砦、亀山城、塞神(さいのかみ)城、古宮城。
田峯
設楽町に残る田峯菅沼氏の本城・田峯城。
伊奈村
豊川市(旧小坂井町)の残る本多氏の居城・伊奈城。松平清康(徳川家康の祖父)の時代に松平氏が三つ葉葵紋を使うようになったキッカケがこの城(といわれている)。
小坂井
寛永九年(1632)に廃された代官所。
長沢
豊川市(旧音羽町)の岩略寺城(上)と長沢松平氏の居城だった長沢城がセットで描かれている。
牛久保
豊川市に残る牛久保城。この地の豪族だった牧野氏の居城。長篠・設楽原に向かう織田信長が逗留した。
五井
五井城のこと。蒲郡市に残る五井松平氏の居城。
瀬木
豊川市の瀬木城。牧野氏の城だったが洪水により廃城。
蒲方
蒲郡市の下ノ郷城のこと。城主は鵜殿氏。江戸時代には竹谷松平氏が同じ場所に陣屋を構えた。
トカ子
豊川市(旧音羽町)の登屋ヶ根(とやがね)城のこと。登屋ヶ根城は本多忠勝の初陣の城とも。
不相
不相城。蒲郡市に残る鵜殿氏の居城。現在は蒲郡クラシックホテル。
片原
片原(形原)松平氏の居城だった片原城(形原城)のこと。現在は稲荷神社として城の中心部分が残る。
牧野
豊川市に残る牧野氏の居城だった牧野城のこと。現在でも土塁の一部が残る
竹ノ谷
蒲郡市の竹谷城(たけのやじょう)のこと。竹谷松平氏発祥の地。
一宮
豊川市(旧一宮町)の残る一宮城のこと。徳川方の本多百助が今川氏真に包囲されたところを徳川家康が救援した【一宮後詰の戦い】が有名。
上ノ郷
蒲郡市の上ノ郷(かみのごう)城のこと。城主は鵜殿氏。桶狭間合戦後に徳川家康から攻められた城で火縄銃の玉が出土した。
宇利
新城市の宇利城のこと。徳川家康の祖父・松平清康に攻め落とされた熊谷氏の居城。
五葉
新城市の五葉(ごよう)城のこと。ここも熊谷氏の居城で松平清康に攻められた。
月谷
豊橋市の月谷(わちがや)城。月ヶ谷城とも。西郷氏の城。
五本松
豊橋市の五本松城のこと。2つの城が描かれている。
下条
豊橋市の下乗(げじょう)館。【三河国二葉松】に記載があり、『東三河十七騎』のひとり・白井麦右衛門または星野修理の館跡。
成沢
現在の豊橋市小野田町(旧成沢村)にあった城で他の資料には見られない
和田
豊橋市石巻本町和田にあった和田城。松平清康に仕えた渡辺久左衛門の居城。
和田村古城
和田城と共に渡辺氏の居城と考えられる城
仁連木(にれんぎ)
豊橋市仁連木町にあった仁連木城のこと。
草間
現在の豊橋市城山町にあった草間城のこと。
大津
現在の豊橋市老津町にあった高縄城のこと。渥美郡に入った戸田宗光が最初に築いた城
広瀬
豊田市東広瀬町にあった東広瀬城(のことと思われる)。
広瀬
もうひとつの広瀬城は西広瀬城。
浅谷
豊田市足助地区に残る簗瀬九郎左衛門の朝谷(あざかい)城のこと。
大給
豊田市大内町に残る大給(おぎゅう)城のこと。大給松平氏発祥の地
市場
豊田市小原地区(旧小原村)に残る鱸氏の市場城のこと。
鷹見
豊田市上高町にあった城。城絵図には『鷹見ノ古城』とある。昭和の頃に消滅。
足助
豊田市足助地区の足助城。香嵐渓の裏山。
大沼
豊田市下山地区(旧下山村)にあった大沼城のこと。
寺部
西尾市幡豆町にあった小笠原氏の寺部城のこと。ちなみに愛知県にはここも含めて3つの寺部城があった。
小島
西尾市小島町にあった小島城のこと。現在は工場になっており消滅。
東条
西尾市吉良町にあった吉良氏の居城・東条城のこと。現在は古城公園として整備されている。
室
西尾市室(むろ)町にあった冨永氏の居城だった室城のこと。
桜井
安城市桜井町に残桜井城のこと。桜井松平氏発祥の城。
山崎
安城市山崎町の山崎城のこと。築城者は織田信長の父・織田信秀とも伝わる。
安城
安城市安城町の安祥城のこと。現在は安城市歴史博物館が城跡の一部。
上野
豊田市上郷町に残る上野上村城のこと。ちなみに上郷町(旧上郷村)は徳川四天王のひとりである榊原康政の生誕地。