■発行所 株式会社幻冬舎
■著者 千田嘉博
■価格 940円+税
■一言でいうと 城郭考古学者の叫びを凝縮した本
テレビや本で城の専門家として有名な奈良大学の千田嘉博先生の本です。
本の中にも書いてありますが、千田嘉博氏は愛知県の出身なのです。中学生の頃、東海古城研究会という城の研究団体で城を学んでおり、その後、進学して現在に至ります。
さて、その千田嘉博氏の叫びを凝縮したと言ってもよいのがこの城郭考古学の冒険。
私の感想も踏まえチェックしてみましょう!
ざっくり内容を紹介
この本には次の様な事が書かれています。
第一章 城へのいざない
城の始まりから終わりまでをざっくりと紹介。天守だけが城ではないというのが強調されていました。
第二章 城の探検から歴史を読む
城の見方から始まり、少しずつディープになっていく章。名古屋城を例にとり、大天守の石垣は加藤清正時代と宝暦年間(1751~64)の改修があり、その区別の見方などを紹介。
第三章 城から考える天下統一の時代
一番長い章。たぶん千田嘉博氏が言いたかった事はこの章に凝縮されている。織田信長ゆかりの小牧山城、岐阜城、安土城の踏み入った見方から豊臣秀吉と聚楽第など。また行政に対する物言いとか。この本を買ったほとんどの値打ちがここにあります。
第四章 比較城郭考古学でひもとく日本と世界の城
外国の城と日本の城の比較など。ただ私は行った事がない城ばかりなのでよく分からない部分でもありました。
第五章 考古学現場から見る復元
千田嘉博氏による行政への要望申し入れという羊の皮をかぶったオオカミの批判が盛りだくさん。一番ワクワクする章。一応、予算とか時代背景(昭和、バブル期)を肯定しながらの痛烈批判はまさに爽快。
例えば千田嘉博氏は奈良大学の教授なのですが、高取城の石垣崩壊、沢城の完全行政無視などを例に出し奈良県の対応を叩きまくっています。ただその根拠が理に叶っているので反論の余地もなし。
私の感想
大学教授なのに大学教授じゃないでしょ?みたいな本というのが私の率直な感想です。大学の教授は公務員なので、【県】や【教育委員会】にそれなりに気を使うものだと思いますが、その痕跡がほぼ見当たりません。
特に駿府城における【金箔瓦=豊臣の城】という見解に対して、金箔瓦を例に静岡県教育委員会に対する物言いは必見。
でもよく読んでみると、千田嘉博氏の言い分が理に叶っており、今後、静岡県教育委員会の弁明をニヤニヤ(・∀・)楽しみに待っているのですが。
ともあれ千田嘉博氏の笑顔で屠る痛快な一冊でした。