令和三年(2021)に豊橋市吉田城の本丸東にある石垣が崩れました。そこで石垣を修復するために調査が行われたのですが、なぜ崩れたのかという事を調べていくと、全国の石垣の城で問題化している2つの理由が浮かび上がったのです。
2つの原因
吉田城の石垣崩落の原因は調査の結果以下の2つという結論に至りました。
- 石垣の経年劣化と大雨
- 成長した木による内部崩壊
石垣の経年劣化と大雨についてはしょうがない部分もあります。その理由は城は築かれてから数百年経っているのが普通で、石垣の石も劣化していくものです。また吉田城の場合、崩れる前に大雨が降りその影響もあったのでしょう。
しかし問題視されているのが次の理由、成長した木による内部崩壊です。今回崩落した石垣の上には大きな黒松が生えており、成長して根が伸びて石垣の石を内部から押し出してしまったというもの。
木の根による石垣崩壊
これは吉田城の別部分の石垣。赤、青、橙(オレンジ)という3色で写真とパネルを使い分かりやすく説明します。これを見ると木の根が成長して石を押し出し、さらに樹木の重さで石が割れています。この割れた石も崩落の原因になるのです。
なぜ石垣の上に木がある?
ここで疑問。なぜ石垣の上に木があるのか?その理由は主に次の2つです。
- 勝手に生えた
- 植樹された
勝手に生えたというのは、どこからか種子が飛んで来てそれが石垣の石のスキマに入り、そのまま成長していったというもの。植樹は観光用に景観を作り出すために植えられたという理由からです。
しかし木は成長するのでそのままにしておくと重くなりますし、根が伸びて石垣の石を内部から押し出してしまいます。天然記念物や絶滅危惧種ならともかく、普通の木なら石垣保護のために伐採するという考えもアリだと思います。
岡崎城はどうなの?
先日、岡崎城の清海堀探索ツアーに参加して清海堀の中に入った時のこと。石垣の中央に成長した木を見かけました。しかしそのままだと石垣に悪影響を及ぼすということですでに伐られていました。
しかし根はそのまま残っており、もう成長しないとはいえ根を撤去すると逆に石垣が崩落してしまうということなので、経過観察状態という説明がありました。
石垣を測定する器具
この時の清海堀探索見学会で石垣の劣化を調べる取り組みについていろんな説明がありましたが、私が印象的だったのは石垣の石の測定器具です。
まず浮き上がった石の下にガラス棒みたいなものがありますが、これはつっかえ棒ではなく、石の動きを見る器具。もし石が動くと折れたり棒が落下したりするので、石の動きを察知できます。
もうひとつは石のクラック(ひび)の測定器具。クラックが大きくなっていないか?ズレたりしていないかという事を調べます。説明ではクラックの真上に0を設定して、そこから動きを調べるそうですが、なんかよく見てみると、すでにクラックが0から離れている様な気がします…
伐採も進む
あと根が伸びて石垣を内部から押し出している木、つまり孕(はら)んでいる石垣の原因になっている木は、できる限り伐採を進めているということです。
石垣は崩れてしまえばもう2度と以前と同じ様には戻りません。だから石垣を守るか木を守るかということになりますが、私の感想は天然記念物や絶滅危惧種ならともかく、普通の木なら石垣保護のために伐採するという考えもアリだと思います。
一般人はどうすれば良い?
今回の石垣の石孕み問題ですが、私の意見は一般人的には石垣を見れるうちに見ておくというのが精一杯の事だと思います。あと写真を撮っておくとか。これとは別に熊本城や三重県の亀山城みたいに地震による石垣の崩落もあります。行きたい城は行けるうちに行っておくのがよいですね。